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5.ゴアでほうけて(1) 〜ヒッピーやーい?〜
バックパッカーらしさ
AC夜行バスにゆられて早朝、ゴアのパナジ市に到着する。寝不足で回らない頭のままにまたしても地球歩掲載の宿(ヴァズ・レジデンス)に荷物を下ろす。ガイドブックの宿に泊まるなんてバックパッカーらしくないにも程がある。自分はバックパッカーしたかったのに何をしているのか。バックパッカーと言えばバックパックを背にガシガシ歩いて安宿を値切り倒す生物ではないのか。しかし、そんな逞しさに今ひとつもふたつも欠けている至極ボンヤリな私は、気付けばリキシャワラやドライバーに手数料を支払い無難な宿に収まって、部屋で1人フルーツの皮など剥いている。
英語力もなく、詳細な下調べも経験もないままにインド入りする人は全員こんな感じなのか。それともやはり自分の性格のせいなのか。何より英語のできないのが一番問題だった。インドは旧英国植民地なので英語が出来ないとバカにされ面白いようにカモられる。(逆に流暢に英語を操ると尊敬される。)しかしそんな事を現地で嘆いても手遅れなので、ひとまず宿が決まった安心に身をゆだねることにした。窓を開けるとノンビリした路地の生活が目にはいる。
パナジはポルトガル風の街
ゴアと言えば世界中のヒッピーが集合してパーティしている土地、という適当すぎるイメージしかなかったので、浮かれたヒッピーだらけなんだろうなと薄く期待していたが、着いてみればゴアのパナジ市はポルトガル風の落ち着いた海辺の街で、どこからもトランスミュージックは聞こえてこないので拍子抜けした(クルーズ船上パーティではインド人がトランスしてたが)。オールドゴアには世界遺産の教会がある。教会が多くて壁がパステルカラーで、だけど当然インド人が住むインドの町なのだった。

中心地にはビジネス街やマーケットや日本語使用可のネカフェもあり西洋人旅行者もやや多めで栄えていた。フィッシュカレーが非常に美味くてカレー的には大満足だったが、なんせヒッピーがいない。これがゴアか…とややがっかりしてたら、実は違った。私が想像していたゴアはパナジではなくてビーチにあったのだ!
 
目
ところでビーチに行くまえにひとつ、書いておきたい事がある。
ゴア州立博物館へ行く途中で道路工事をしていた。その日も汗がすぐ消えるくらい暑くて、日傘なしには一歩もすすめないくらいなのに、貧しいなりをした人達が土を掘ったり砂利を運んだりしている。低いカーストの人達だ。もちろん重機などなく全て手動だし、力仕事にもかかわらず男女も年齢も関係なく働いていた。
そういう光景はこれまでも何度か目にしていたので、これがインドなんだと、何気なく、また気まずさを感じつつ通り過ぎようとしていた。子どもは無邪気なもので3歳くらいの男の子たちが石を運びながらも、アジア人が珍しいのか笑いかけてくる。大人達はただ黙々と働いている。
その中で1人、10代後半くらいに見える若い女が、砂利を頭に乗せては投げつけるようにして運んでいて注意を引いたのだった。腹を立てているかのような。何かあったのかもしれないし、そうではないのかもしれない。とにかく、生命力にはちきれそうな心身をようやく押さえこんでそこにいた。痩せた体が灼熱の太陽にギラギラ照らされていた。ふと目が合う。突き刺さりそうな物言う目である。
その瞬間、異国を旅する自分の時間と砂利を頭に乗せて生きるよりない彼女の時間が交差して、ガツンと殴られたようにカーストや自分や彼女の存在を感じた。同情や罪悪感ではなく、なにか生々しく規範を越えた感覚だった。不思議だがそれは歓喜に近いと思う。それは旅の間、ずっと離れなかった。
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